コーヒー1杯分の幸せを作ろう

3児の育休ママが、コーヒー1杯分の時間やお金を作るために役に立ったものたちを、挫折や試行錯誤の経験を交えながら紹介します。

ゴーギャンと理想郷

人はいつも、此処ではないどこかを夢想してしまう。

 

誰もが理想の生活という像を描いたことはあるだろう。人間の中にはニ種類いて、思い描いた夢に向けて動く者と、ただ口を開けて待っている者に分かれる。

 

フランス人の画家ゴーギャンは、常に楽園を探し続けた。彼の描く絵には、かぐわしい女の肌の匂いが、むせるように立ち込めている。楽園への切符を掴みかけるのだが、病魔に打ちひしがれ、現実を叩きつけられてしまう。医療の発達してない途上国では治療が難しい。ゴーギャンも健康を害して、フランスに戻ることが多かった。療養したら懲りずにまた南国へ、取り憑かれたように旅立っていく。

 

ゴーギャンの祖母は、女性活動家として知られていた。彼女もまた、理想の国家を目指して動いていたという点では、ゴーギャンに流れる沸き立つような血筋を感じずにはいられない。

 

株式仲介人という仕事を35歳で捨て、5人の幼い子供をフランスに残して南国で暮らすことは、傍から見たら狂気の沙汰ではない。家族にとっても、ただ迷惑な話だ。ただ、ゴーギャンがもし子供たちとデンマーク人の規律性の高い妻とパリで恵まれた生活を送っていたら、あのような絵は決して残らない。家族と自分の体を生贄に捧げ、素晴らしい芸術作品を残したとも言える。

 

芸術家達が後世に語り継がれるのは、その技術だけではなくて、背後に見られる生き様なのである。自分では決して出来ない、その豪快な生き方に、我々はロマンを見いだし、彼らの感じた激情や、心の揺らぎを、絵画という形で追体験させてもらえる。だからこそ、人は絵画を見て想いを馳せるのであろう。自分では遠く届かなかった理想郷へ手を伸ばし続けた愚か者たちへ、尊敬の念をこめて。